マレーシア子育て

海外で発達障害児を育てるということ

以前の記事でも書いたように「発達障害児は海外で子育てしよう!」という意見に良い印象を持っていない私ですが、実際に海外で発達障害児育児を半年間してみて、感じたこと・考えていることを記事したいと思いました。

この記事は、海外での発達障害児育児を検討している方にとっては嬉しい情報ではないかもしれませんが、実体験として誰かの参考になればと思います。

発達障害児を海外で育てる時に知っておくべきこと

発達障害児を海外で育てることには非常に多くの問題点が存在します。

それは日本で感じていた問題点と同じようなものばかりですが、場合によってはその問題がより強くなる恐れがあるでしょう。

【筆者の事前情報】
・マレーシアのインターナショナルスクールに息子・娘が通学中
・母子留学でパパは日本
・息子はADHD
・子供たちは英語習得前に渡航
・母親も英語力が低い

国によっては日本以上に理解されない

これはもう、行く国・行った国の環境・学校の姿勢によるので、運としか言えません。

直接事前調査に行ったとしても、数日間で感じ取れる問題ではないため、本当に「運」です。

発達障害であること・症状を説明しても「なぜ普通にできないのかしら?」という態度を取られることも多々あります。

でもこれは、日本でも同じような態度の方・教育者もいるので、諦めるしかないかもしれません。

もちろん全ての人に理解してもらうことは不可能だと考えていますが、自己中だ・我儘だと誤解を受けるのは自分ではなく子供であることから、なかなか辛い現実です。

カウンセリングや治療には多くのお金がかかる

日本なら保険適用だった治療も海外では実費で受けることになり、私の住むマレーシアでは病院でのカウンセリングが1万円弱〜2万円以上かかります。

マレーシアは日本よりも少しだけ安く生活ができるため、この医療費負担非常に重く感じてしまうのが正直なところです。

しかし、海外での発達障害児育児に不安を感じたまま子供を放置することは避けるべきなので、必要な費用だと考えるべきでしょう。

日本よりも勉強が大変な場合がある

これも行き先によって変わりますが、ほとんどの国では日本の公立小中学校よりもインターナショナルスクールの方が勉強量が増えると思います。

特に高学年以降で海外に出る場合は、非常に高い言葉の壁とも直面しないといけません。

勉強大好き!という子どもならともかく、普通の子供とってその環境は非常にストレスフルだと言えるでしょう。

現実を叩きつけられる

通知表の評価も濁し一人だけが輝かないような配慮のある日本と違って、外国は能力主義です。

きっちり成績がつけられて、成績が悪ければ進級もできません。

もちろん得意を伸ばす・努力が評価されるという点で多くのメリットもありますが、自分の能力が分かりやすく評価されることに慣れていない日本人の子供にとっては、落ち込む機会が増える可能性があります。

逆に考えると、発達障害児であっても勉強が得意な子には、単純に評価される機会が増えて良いかもしれません。

また、日本人として外国にいる以上、人種や出身国による差別・誤解・歴史上の問題も常につきまといます。これは国内の生活ではほとんど感じずに済む現実だと言えるでしょう。

学校には先生がたくさんいる

小学校に限っての話ですが、日本の小学校には担任の先生がいて、担任の先生と密な連絡をとっていれば、子供の様子を知ることができるだけでなく、伝えたいこと・配慮をお願いしたいことなども話し合いやすいです。

実際私は日本で入学・進級のたびに、息子の症状・注意点・可能であればお願いしたい配慮をテキストにして見せながら説明する時間を、担任の先生にいただいていました。

しかし、インターナショナルスクールは教科ごとに先生が変わり、担任はいるものの・・日本ほど全てを総括している感じではありません。

問題があれば教科の先生から個別に連絡がくるし、親から伝えたいことも各教科の先生に直接連絡をしない限り伝わらないようです。(学校によって対応が違う可能性もあります)

そのため、とにかく連絡先・対応先が多く、問題行動が少なくなった今でも負担を感じることはあります。

子供が孤立しやすい

これもまた言葉の壁の問題ですが、日本人しかいない日本の学校でも簡単ではないのに、英語が話せない状態での海外での友達作りは非常に難しいものです。

その状況を辛いと感じた子供は、どんどん引きこもってしまうかもしれません。

うちの子は一人も好きなので辛さは感じていないように見えましたが、入学当初はポツンとしている状態も多かったようです。

今も友達いっぱいとは違うものの、本人が一人と友達といる時間を気ままに選べている?ようなので、とりあえず現段階では大丈夫なのかなと思います。

親の余裕がなくなる

日本にいた頃から心・時間・お金にさほど余裕があったわけではないものの、マレーシアに来てからしばらく・・いや何ヶ月もの間私には全く余裕がありませんでした。

外国あるあるですが、何も思い通りには進まない。それでも問題はどんどん発生する。そこに英語力不足も重なって、はっきり言って移住後4ヶ月くらいはあんまり記憶がありません。

常にいっぱいいっぱいで、目が回っていたような感じです。子供のフォローも完全に不足していました。

子供は親のことをよく見ているものなので、この状況下で息子と娘にどんな不安とストレスを与えてしまったかは、想像もできないし反省しかありません。

特に片親を日本に置いての海外生活は、全てがスムーズに進んでいたとしても子供は心細く不安な状態になるはずなので、十分なフォローをしてあげるべきでしょう。

子供が感じる劣等感について

先ほどお伝えしたような問題が重なれば重なるほど、子供の劣等感は強くなっていくと思います。

もともと劣等感が強くなりやすい発達障害児にとって、これは良い環境とは言えません。

日本にいた時から劣等感を強く感じていた息子を、酷な環境に押し込めてしまったかもれないと何度も悩みました。

今まで日本で普通の成績を取っていたのに、突然マレーシアで学年を落とされた上に常に悪い成績(英語が大して話せないので当たり前のことなんですが)・・友達もいない・・親には勉強勉強言われる・・

挙句に親に余裕がなくて家庭内も嫌な雰囲気・・なんて最悪ですよね。

かと言って、学校の成績や英語力は短時間でどうにかなるものではないので、少なくとも家庭で本人の頑張りを認めてあげる・応援してあげる姿勢が本当に大切だと思います。

海外で発達障害児を育てていて良かったと思うこと

悪いことばかりを並べてしまいましたが、海外での発達障害児子育てにも良い点はあります。

正直、悪い点の方が多いかもしれないけど・・個数じゃなくて重要度で考えると、それは各家庭で考え方が変わる部分でしょう。

褒められる機会が増える

実力主義と逆のように感じますが、海外では相手の良い点を素直に褒めてくれる人が多いです。

成績の結果だけでなく前のテストからの成長や、授業中の姿勢もしっかり見てもらえて「素晴らしい成長です!」「大きく伸びています!」などと評価してくれます。

また、お友達のママやご近所の方から「挨拶ができて素晴らしいね」「いつも笑顔で素晴らしいね」などと褒められる機会も多いです。

それはうちの子だけでなく、マレーシアが日本よりも「あなたの髪型素敵ね」「笑顔が素敵ね」など褒める文化が多い国だからだと思います。

デバイス三昧だった子供が変わった

日本では私は、さほど教育に力を入れていませんでした。だからこそ英語力も不足したままの渡航になってしまったのですが、日本でYouTube三昧だった子供が「勉強楽しい」と言い出したことが本当に嬉しいです。

英語の成長を自分で感じながら、少しずつハードルを越えていく子供たちを見ると、そのために必死になっている自分も報われる気がします。

初めは「めんどくさい」ばっかりだったことも、習慣化という武器でなんとかなるもんですね。

普通を求められない気がする

私がマレーシアにこれからも居続けたい最も大きな理由です。大変申し訳ないのですが、うまく文章化できません。

日本で「普通でいなきゃ・普通にさせなきゃ」と思っていないつもりでも、無意識に感じていた自覚のある私は、今の生活がとても楽です。

これまで書いてきた問題を払拭できそうなくらい、強く解放感と心地良さを感じるのです。

それは子どもにも同じようで、息子も「勉強きついのに、なぜかここが好きだ」と言っています。

その心地良さはどこにあるのかを説明するのは難しいものの、自分と子供が感じる心地良いことと勉強・仕事のバランスを上手いこと保ちたいなと考えています。

私は海外での発達障害児育児を万人には勧めない

発達障害児育児は海外に来ても良い方向に進むとは限りません。正直、悪い方向に進むリスクの方が高いのではないかと考えています。

しかし実際には、多くの発達障害児を持つ親が海外に目を向けており、自分自身もそうなので、その気持ちは痛いほど分かります。

実際、留学斡旋業者などでは「海外で発達障害児育児はおすすめ!」みたいな情報を使って利益を得ています。

それでも、正直に申し上げて日本よりも大変なことは多いです。

私個人の考えですが、次のような事柄が複数該当する方は、発達障害児の海外での子育てをよく検討し直すことをお勧めします。

  • 海外があまり好きではない(食・気候・衛生面・文化の違い・適当さ)
  • ママが英語が話せない
  • 一人で決断できない
  • 子供を海外に連れ出すという責任感が薄い
  • 危機管理能力が低い
  • ママが自力で気分転換ができない

ちなみに私は英語力が低く、その点でかなり苦労しています。ただし大の海外旅行好きなので、生活の上での不便からは大したストレスを感じません。

ただでさえ子育てが大変なのに、英語と生活全般でストレスを感じ、さらに自分で自分のストレスを発散できない方は、海外で孤立して精神的に辛い状態になる可能性が高いため、注意するべきでしょう。

また、ストレス発散方法が行く国で手軽に行えることなのかも調査しておいてください。例えばマレーシアでは、お酒は宗教上手軽に飲めるものではありません。

もちろん「やってみて決めればいいじゃない!」というのが最も良い答えなのですが、海外留学は多くの費用だけでなく、子供に与える影響も強いので、十分な検討・準備の末に行うものだと思います。

この記事が、発達障害児育児に悩む方にとって、プラスの情報になることを祈りたいです。

今回の記事は、コチラの記事と重複する部分もあります。よろしければご覧ください。

ABOUT ME
sumire
フリーランスライター・カメラマン マレーシアで13歳発達障害児・9歳マイペース女子育児をしています。